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小型ニキシー管時計を作りました


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美しいニキシー管を用いた時計を作りました.表示のきれいなスタティック点灯を採用し,また発熱が小さい高効率な電源にすることで小型のケースに収められるようにしました.

 

<投稿者:dip_factory

趣味で電子工作をしています.某ゲームのためにニキシー管の魅力に取り憑かれました.

twitter.com

 

ニキシー管時計

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製作したニキシー管時計です.ニキシー管があまりに好きで,自分でもなにか作ってみたいと思ったのがニキシー管時計を作ろうと思った動機です.どこにでも置けるものを目指し,小型のニキシー管時計を作りました.ニキシー管には,IN-12を用いました.

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IN-12,直径1mmほどの足が出ています.写真はIN-12B

 

ニキシー管時計のコンセプト

ニキシー管時計の製作に関して,以下のような目標を立てました.

  • 小型でどこにでも置けるようにすること.
  • ニキシー管の美しさを愛でられるよう,できるだけきれいに点灯させること.
  • 時刻合わせの必要が無いこと.
  • スイッチ類が極力ないこと.
  • ニキシー管の交換が容易なこと.
ニキシー管 IN-16 6個セット

ニキシー管 IN-16 6個セット

 

 

スタティック点灯を採用

すでにニキシー管時計を1台製作しており,その時は素子数を減らすため,点灯させる管を短時間で切り替えながら表示するダイナミック点灯を用いていました.この手法では,ある程度以上に切り替えの時間を短くできないため,若干のチラツキが出てしまいます.また,スイッチ素子もK155ID1というICを使ったのですが,本ICではスイッチ素子の耐圧をプリバイアスというテクニックを用いてカバーしています.このため,ダイナミック点灯を採用したことも有り,点灯している数字以外の数字がぼやっと光ってしまいました.そこで今回は,すべての電極を個別にスイッチングし,また170V以上の電圧を直接スイッチできるHV5522という素子を用いました.

www.microchip.com

 

回路構成

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HV5522が12Vを必要としますので,それより一段高い15Vを全体の電源としました.5V系はニキシー管のバックライトLED,GPSモジュールとそのバックアップ電源(電気二重層コンデンサ)の充電などで最大500mAを消費しますので,15Vからの降圧にもスイッチング電源(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-11188/)を用いました. 

akizukidenshi.com

 

昇圧回路の製作

ニキシー管点灯用の昇圧回路はネットでも製作例の多いNJM2360を用いたスイッチングによる昇圧コンバータとしました.少しでも昇圧比を小さくするために,コイルに供給する電源に15Vを,NJM2360の電源としてレギュレータで安定化した12Vを分けて用いました.電源を分離したことにより,シャント抵抗による電流検出ができなくなりますので,代わりにリセッタブルヒューズF1による過電流防止を入れました.写真はテストのために製作した,ほぼ同じ回路の昇圧回路です.

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akizukidenshi.com

 

高圧回路の危険性と安全の確保

本電源は,条件が良くなければ命の危険がある電源です.電源の入力側に入れたリセッタブルヒューズF1はせいぜいニキシー管や電源アダプタを壊さないようにするためのものであり,命を守ってくれるものではありません.そのため,本電源の製作・テストには十分な注意が必要です.


人体の抵抗値は状態にもよりますが,おおよそ0.5~3kΩ程度と考えておいて良いようです.本電源は,180Vを出力できるのは30mAが限度ですが,電流を増やしても70Vくらいの電圧を維持してしまいます.そのため本電源で感電した場合に考えられ得る最大電流は140mAになります.人体は6~9mAで苦痛を伴わないショックを受け,60~90mAの電流が流れると,かなりの苦痛を伴うとともに,筋肉が硬直し呼吸困難になります.また,神経が麻痺することにより自分の力で電源から離れられなくなります.このため,瞬間的には命の危険が無い場合であっても,更に危険な状態に陥りやすいということも留意が必要です.(https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/td/SD-70-1.pdf

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感電を確実に防ぐことはできませんが,リスクを小さくすることはできます.まず,本電源は非絶縁型です.そのため,大地電位と絶縁するため,絶縁型のACアダプタを使用します.また,回路の試作などを行うときは体全体を地面から絶縁し,装置や試作回路を片手で操作します.加えて私は初めて電源を入れるとき,Skypeで通話しながら,通話相手に「今から電源入れるから,もし返信がなければ救急車を呼んでくれ」と言いながら電源を入れました.今では笑い話ですが,そのかいあってか,まだ感電事故はありません.

 

交換可能なニキシー管の選定とピン

IN-14用のピンソケットには,アメリカのMill-Max Manufacturing Corp. という会社の0341-0-15-15-30-27-10-0という型番のものを使用しました.このソケットは,基板に埋め込む形で設置できるため,基板表面からIN-12の頭までの高さを多少低くできます(そのかわり基板の裏側に3 mm程度ピンのお尻が飛び出します).このピンは2019年現在,Amazonでも手に入ります.このピンは概ね問題なくIN-12に用いることができます.ただし,本来直径 0.38~0.64mmのピンのためのソケットで,IN-12の太いピン(およそ0.9~1.1mm程度)は規格オーバーです.このため,IN-12を刺していると稀にソケットの中のコンタクト部品が取れてしまうことがあります.簡単に直すことはできるのですが,可能なら,規格にあったものを手に入れてみたいと思います.

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www.mill-max.com

 

 

<投稿者:dip_factory

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