耐熱PLAフィラメントを使って3Dプリンタでモールドを作り、低融点合金を流し込んでコマを鋳造してみました。
<投稿者:Nature3D @nature3d_>
フィラメント押出職人。卓上押出機で3Dプリンターのオリジナルフィラメント開発、製造、評価、用途展開などやっています。
ご家庭で簡単に鋳造を!
当方は3Dプリンタ用のフィラメントを作っているんですが、これを使って3Dプリンタでできる新しいことはないかといつも考えています。その中でうまくいき、最近実績ができてきたことの一つに鋳造があります。
耐熱PLAのフィラメントでモールドを造形し、そこに138℃低融点合金を流し込み鋳造するというものです。モールドは一度だけでなく繰り返し使えるので、これなら金属の製品がご家庭でも小ロットで作れる可能性があります。低融点合金はあまり強度はないので鉄やアルミのような使い方はできませんが、アクセサリや小物などのメタルパーツくらいは作れるかもしれません。えっ?そんなことができるの?という方はぜひ読んでみてください。
準備したもの
・耐熱PLAフィラメント
今回はLFG30というフィラメントを使いました。
ちょっと扱いにくいという場合は、こちらのLFY3Mというフィラメントでも同じように鋳造用モールドを作ることができます。
今のところ低融点合金鋳造ができるのはこの2つのフィラメントだけです。市販のPLAやABSフィラメントでは熱に負けてドロドロになってしまうのでご注意を・・・。
・低融点合金(融点138℃。スズ-ビスマス共晶合金)
・グルーポット(低融点合金の加熱溶融用)
小さいので使いやすい。ホットプレートなどでも可。
・シリコン容器(低融点合金の容器)
100円均一のものでもいいと思います。アルミ容器でも可。
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造形とアニール処理
今回はこちらのデータを準備しました。映画のインセプションででてくるコマを鋳造で作るというものです。案外こういうデータは造形すると、サポートで裏がちょっと汚くなってしまったり、先端に行くにつれ熱が造形品にかかりすぎてうまくいかなかったりします。鋳造でパシッときれいにできるといいのではと思いました。
型の内面をきれいにしたいので、ちょっとムダがでるのですが、外面にサポートがつくように造形します。
サポートをとって研磨。特に内面にひっかかりがあると離型しにくくなるのでていねいに磨きます。
後は造形品をトレーに乗せてオーブン投入し100℃ x 20分でアニール処理。アニール処理を行うことで造形品の耐熱が160℃まで上がります。
型を組み合わせました。これで型の準備は完了です。
いよいよ鋳造!
事前に低融点合金をシリコン容器に入れてグルーポットで加熱しておきます。20分くらいで溶けてきます。後は組んだPLAモールドに低融点合金を注ぎます。手や目にかかったり、こぼしたりすると大変危険ですので保護手袋、保護メガネなどをつけて作業し、トレーなどの中で鋳造するなど安全対策は十分行ってください。
低融点合金を流し込みました。しばらくは熱いので20分ほど冷ましてから型を開きます。
おーーーっ!!結構きれいにできている!いつも型開きはドキドキしながらやるんですが、うまくできたときは感動ものです。
バリをとり、湯口をカットして完成です!
実際に回したところ。うまく芯を出して回すと1分くらい同じところで安定して回り続けてくれます。
結構よく回るのでみてやってください! pic.twitter.com/ZOSlKQqAY4
— Nature3D (@nature3d_) October 21, 2019
最後に
3Dプリンタは数個単位でのモノ作りは可能、射出成型などでは数万個単位のモノ作りは可能ですが、数百個、数千個単位でのモノ作りができる方法がないと以前から言われています。モールドを作っての鋳造が、この領域に近づく方法の一つとして使えないかと考えています。鋳造をはじめ、他にも自作フィラメントでできる新しいものがないか、これからも模索していきたいと思います。
<投稿者:Nature3D @nature3d_>
フィラメント押出職人。卓上押出機で3Dプリンターのオリジナルフィラメント開発、製造、評価、用途展開などやっています。