ワニくんを追悼して、ワニカレー作ってみた。
<投稿者:存在の耐えられない軽さに悩む京都のカレー屋さん>
100日後に喰われたワニ
死が訪れるまでの100日間の様子をカウントダウン形式でTwitter上に連載し、完結後、怒涛の如きスピード感でビジネス展開し話題となった、ワニが主人公の某漫画。
ご多分に漏れず筆者も割と熱心な読者であった(ワニ没後出版されたコミックスも買ったしね)。ふと、死ぬ日が逆算できるなら準備も容易いな…と、いつもの通り邪悪な目論見を発動させてしまい、彼が死んだ翌日のタイミングで「ワニカレー」の提供を不謹慎ながらも開始。多くのお客さんからご好評をいただいた。
彼の49日を迎えるにあたり、当店で出したワニカレーのレシピを振り返ってみようと思う。なお、各材料・調味料の分量は、筆者の店に相応額課金すれば知ることができる仕様です(何)
嘘みたいだろ…ワニ肉なんだぜ…
最近でこそ色んなところで見かけるようになった(?)ワニ肉。とはいえ、口にしたことがない人の方が大半だろう。
ワニの肉、弾力はあるがそんなに硬くない。どちらかといえば鶏肉の味わいに似ている。そこに、フグやヒラメなど「割と歯応えがしっかりした白身魚」系の味わいがプラスされたような感じ…とはいえ、そのいずれよりも旨味が濃い印象。決してゲテモノではなく、焼いて良し!煮て良し!蒸して良し!生食ダメ絶対!な好食材。どこかで見かける機会があれば、ぜひ食べてみてほしいなと思う。
ワニ肉の処理〜火入れ(Aパーツ)
というわけで、ワニ肉をカレーにメタモルフォーゼさせてゆこう。
〈材料〉
◆Aパーツ
- ワニ肉(一口大に切り分ける)
- おろしにんにく
- マジョラム
- コリアンダー粉
- クミン粉
- 粉山椒
- チリ粉
- オイスターソース
①まず、ワニ肉に下味を付ける意味でAパーツの材料をしっかり全て混ぜ合わせ、冷蔵庫で3時間ほど寝かせる。この時、元気だった頃のワニくんの顔を思い浮かべながら作業すると、何とも言えない気持ちになってくるので是非試してみてほしい。生きるということは、そういうことである。
②サラダ油(分量外)を鍋底に敷き、十分寝かせたワニ肉を入れ、熱していく。温める過程でびっくりするほど水分が出てくるので、沸騰する手前くらいの火加減でうまく水分を残しつつ、焦げ付かないようかき混ぜながら満遍なく火を入れる。ワニくん…。
カレーのベース作り(Bパーツ)
ワニくんの色合いをミドミドしく表現するため、今回のベースには「青菜」を用いてみることにした。材料には「季節の青菜」と書いたが、手に入り易い青菜(ほうれん草とか)に置き換えてくれても問題ないと思う。
当店では
- わさび菜
- セロリの葉
- せり
- 大葉
- 春菊
- ほうれん草
と、香味重視のラインナップで攻めてみた。
〈材料〉
◆Bパーツ
- 季節の青菜ペースト
- たまねぎ(みじん切り)
- トマト(細かいサイコロ状に切る)
- おろしにんにく&しょうが
- クミンシード
- ★コリアンダー粉
- ★ターメリック粉
- ★ガラムマサラ
- ★チリ粉
- 生クリーム
- 任意の出汁
③青菜を湯(少量の塩を溶かしておく)で軽く茹でて、氷水で冷やす。水気を切ったらぶつ切りにし、冷ましておいた任意の出汁に2〜3時間浸して風味をのせる(おひたしの要領だが、この段階では塩分は控えておいた方が無難)。
④青菜の水気を切り、ミキサーなどでペーストにする
⑤フライパンにサラダ油を敷き、クミンシードがパチパチ弾けるまで熱する。次におろしにんにく&しょうがを入れ、香りが立つまで炒める。
⑥次に、細かめにみじん切りしたたまねぎを入れ、飴色になるまで炒める。火加減をうまく調整しつつ、決して焦がさないように炒め続けること(焦がしたら苦味がカレーに乗ってしまう)。色づいたら★のスパイスを全て投入し、たまねぎに馴染ませるように炒める。
⑦次にトマトを入れ、全体がペースト状になるようにたまねぎと馴染ませつつ炒める。
⑧最後に青菜ペーストを入れ、馴染ませる。その後生クリームを投入し、全体が混ざり合ったら任意の出汁を入れる。それらを全て馴染ませつつ10〜15分ほど煮込む。
出会い、そして、融合
最後に、A・B両パーツを合わせていく。この時、接着剤のような働きをしてくれるのがコア・ブロックの品々だ。
〈材料〉
◆コア・ブロック
- 日本酒
- 一番出汁
- サラダ油
- 無塩バター
- 塩
⑨なるべく多めの無塩バター、なるべく多めのサラダ油を、なるべくいっぱい鍋に入れ、混じり合うように温める(情熱の薔薇のメロディで)。バターは火を入れすぎると焦げるため、弱火〜中火の間を行き来しながらしっかり溶かし切ること。溶けた油脂はそのままAパーツの入った鍋に躊躇なく流し込む。
⑩その後直ちにBパーツと日本酒・任意の出汁を鍋に流し入れ、全体を馴染ませるようにかき混ぜながら煮込んでアルコールを飛ばしていく。先ほどの油脂量が適切だと、両パーツを抱き込んでうまい具合に1つのソースへとまとめていってくれる。バターによる乳化作用が関係してるのかも。最後に塩で味を整えて完成。
生きる(実食)
ワニと青菜のカレー爆誕したので食べましたね(過去形)。
青菜のカレーは、パニール(インドのカッテージチーズ)やチキン、マトンなどと合わせて食べると相性が良い。今回はパニールと三つ葉、そしてパプリカを散らしてみた。
青菜が思っている以上に出汁やワニの旨味、バター由来の獣脂の甘みをキープしており、うまくパニールやワニ肉との均整が取れていたように思う。ごはんと絡めたときの、白米本来の甘みを下支えしてくれる感じが…とても頼り甲斐があって…食が進みすぎる……。
そして、思い出した頃にわさび菜やせり、大葉の爽やかな刺激が、鼻や口をくすぐっていく。君たちをカレーにしてよかった…と深く感動した瞬間だった。
肝心のワニ肉は煮込まれることで弾力が増し、その噛み応えを存分に楽しめた。スパイスや下味やらと融合した濃厚な旨味が、一噛み毎にジュワッと染み出てきて、これまた味覚を楽しませてくれる。しかも旨味が長続きするんだよなー。ワニくんうめぇ、うめすぎるー!
お客さんからも様々な反応をいただいた。
「ワニくんの死が哀しいのと、ワニカレーが美味しいのとは、話が別!」(ご夫婦で来られていた奥さんが旦那さんに向かって)
「ワニくん…うめぇ…」(サラリーマン風の方がしみじみとした表情で)
「ワニ…ん…?!ワニ?!!……ワニか…」(ご年配のお客様が何かを悟ったような表情で)
みんな、おもいおもいに、たべてたよ。
完売御礼でした。
もし
「自分でもワニカレーを作ってみたい」
「ワニ肉の仕入れ先が知りたい」
「作り方を詳しく指南してほしい」
という方がおられたら、遠慮無くご相談ください。当店に相応額を課金すれば以下略。
~おしまい~
<投稿者:存在の耐えられない軽さに悩む京都のカレー屋さん>