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オムニホイール×差動歯車でヘビロボットを作ってみた


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<投稿者: さつき @satsuki_eng

去年まで大学でロボコンやロボットの研究をしていた、新米の機電系エンジニアです。趣味として、見た人に「面白い!」と思ってもらえるような、少し変わったロボットを作っています。

https://twitter.com/i/events/1249293342556311553?s=13

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われはロボット〔決定版〕

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何を作ったか

今回作成したのは、関節に搭載された4つのモータだけで、前後左右に動くことができる、全方向移動型のヘビロボットです。まずはこの動画をご覧ください。

 

なぜ作ったか

オムニホイールを使って、何か面白いロボットが作れないかと考えていたときに、ヘビロボットへの応用を思いつきました。

www.shumi-tech.online

 

ヘビが前に進むしくみ

生物のヘビが蛇行によって前に進むしくみをご存知でしょうか?蛇行推進のカギとなるのは、腹の構造にみられる「滑りの異方性」です。ヘビの腹には、スケート靴のようなエッジがあり、進行方向(長手方向)には滑りやすく、横方向には滑らないという特性があります。この「滑りの異方性」により、ヘビは体をくねらせるだけで前に進むことができます。体をくねらせるときに、頭から尻尾にかけて波を送るようにすると前に進み、逆に尻尾から頭に波を送るようにすると後ろに進みます。

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これをロボットで再現するにはどうしたら良いでしょうか。実は、「滑りの異方性」は、駆動力を持たない車輪(キャスター)を胴体に取り付けることで、簡単に再現できます。また、胴体のリンク(骨)の数は、実際のヘビのように何十個も必要ではなく、最低3つでかまいません。言い換えれば、ヘビロボットは2つのサーボモータで自作できるお手軽ロボットなのです。

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作ったロボットの紹介

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今回作成したロボットは、最小構成より少し豪華で、1関節あたり2つのモータ(計4つ)を搭載しています。これによって、関節をヨー・ピッチの2方向に曲げることができます。また、「滑りの異方性」は、ただの受動車輪ではなく、オムニホイールと差動歯車の組み合わせによって実現しています。

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この機構を使うと、蛇行だけでなく「横方向への転がり移動」が可能になります。具体的には、下図のように、第二リンクに対して、他のリンクを円弧状に動かすことで、ロボット全体が寝返りを打つように横方向に移動します。(余談ですが、この移動方式はおそらく生物のヘビには見られません。腹だけでなく体全体に滑りの異方性が必要になるのと、何より目が回るので……

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同様の性質は、各リンクの中央に1つオムニホイールを固定するだけでも実現できますが、そうするとロボットの姿勢がS字状になったときに、下図の赤線を軸に、ゆらゆらと揺れてしまいます。これは、ロボットの接地点をつないだ多角形(支持多角形)の面積が0になってしまうためです。それに対して、胴体リンク1つあたりに接地点が2つあると、S字になっても、支持多角形の面積が0にならないので、姿勢が安定します。

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山溪ハンディ図鑑	増補改訂 日本のカメ・トカゲ・ヘビ
 

 

どのように作ったか

1)オムニホイールの設計

今回の設計では、オムニホイールの軸の中に配線を通す必要があります。その用途に合わせて、今回は専用のオムニホイールを自作しました。詳細は別の記事で紹介しています。

2)差動歯車機構の設計

差動歯車機構に使用するベベルギヤ(傘歯車)の設計には、以下のサイトを使用しました。

www.knowhave.com

基礎から学ぶ 機構学

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3)二自由度関節の設計

モータ二つを90°ずらした形で組み合わせれば、2方向に曲がる関節を作ることができます。しかしながら、実は単純に組み合わせるだけでは、関節両端のリンクの瞬間的な回転速度が同じになりません(カルダン誤差)。

http://www.taiyo-koki.co.jp/UJ.pdf

 

リンクの回転速度がそろわないと、ロボットはきれいに転がることができません。そこで、二自由度関節の設計は、ヘビロボットの大御所である高山先生・広瀬先生のアイデアを参考にしました。

http://rraj.rsj-web.org/back_wp/wp-content/uploads/22_625.pdf

 

ポイントは、関節中心部分のロール回転をフリーにし、代わりに蛇腹構造で2つのリンクをつないでいる点です。

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これによって、関節で繋がれた2つのリンクの回転速度はぴったり同じになります。曲がるストローを曲げて、片方を回すと、もう片方も同じ速度で回りますが、それと同じ原理です。

 

蛇腹の柔軟部分(ピンク色)は、TPUフィラメントを用いて3Dプリンタで製作しています。曲がりやすく、ねじれにくい蛇腹を作るために試行錯誤を繰り返しました。

 
また、動力伝達のスパーギヤの設計にはFusion 360のアドインを使用しました。このアドインにはBacklashの設定項目があり、この値を0.2mm程度に設定することで、3Dプリンタ(Adventurer 3/3X)で造形する際の膨張誤差を相殺することができます。

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課題

オムニホイールの樽の回転が少し渋いこともあり、現段階では蛇行の際にかなり滑っています。理論的にはスムーズに動けるはずなので、改良の余地ありです。
(ロボットの部品点数が多いので、なかなか分解に踏み切れません……)

 

最後に

今回は、オムニホイールと差動歯車を使った新型ヘビロボットについて、メカの部分を中心に紹介しました。Twitter上でも、ヘビロボットを作られている方はあまり見かけないので、この記事をきっかけに、ヘビロボット仲間が増えると嬉しく思います。

 

 

<投稿者: さつき @satsuki_eng

去年まで大学でロボコンやロボットの研究をしていた、新米の機電系エンジニアです。趣味として、見た人に「面白い!」と思ってもらえるような、少し変わったロボットを作っています。

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