技術力の頂点を競うロボットバトルが「ロボコン」とすれば、「技術力の無い人のためのロボット相撲」という、その対極に位置するのが「ヘボコン」です。DPZ(デイリーポータルZ)の一企画から始まった「ヘボコン」は、その名の通り「ヘボい」ロボットを作り対戦し、何より勝敗よりその「ヘボさ」を讃える、という字面にするとなかなか不可解なイベントです。
<投稿者:ペンとサイコロ @pen_n_dice>
ボードゲーム制作サークル。2014年からゲーム制作を開始し、2018年8月時点で7作をリリース。「趣味でやっている個人制作」ながら、金沢の和菓子店とコラボレーションした「かいちん」をリリースしたり、処女作「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」が台湾よりライセンス品としてリリースされるなど妙な展開を続ける。
※ヘボコンについての詳細はこちら
ボードゲーム「卓上ヘボコン 対戦キット」について
私は趣味で2014年からボードゲームを作っているのですが、ヘボコンに出会って「これをボードゲームにしたい」と思いついたのは2017年の5月頃。まずはヘボコンの創始者であるニフティの石川さんに直接コンタクトを取り、試作品を持ってニフティにご挨拶に伺い、許諾を頂きました。
ゲームは ロボットの部品となるタイルを「集め」、「組み立て」てロボットを作り、そのロボットで「対戦」し、合計点を競うという、ヘボコンの流れを一通り再現したもの。組み立てたロボットの点数が高い(ヘボい)と、対戦時に思った動きにならない、両方のバランスを考えて組み立てようとすると、組み立てる時間が無くなると、「思った通りにならないままならなさ」を楽しむものとなっています。
詳細は、紹介動画を作成頂いたので、ご興味をお持ち頂いた方はこちらをご覧下さい。
試作
ボードゲームの試作時点では業者などを通さないので、家にある物で作ります。他のゲームから部品を引っ張り出してきて、ということもありますが、ボードゲーム制作を始めると「ゲーム製作用の小物」や、「何かのために買っておいた100均の雑貨」があることが多い(というか、まずある)ので、そうした物を組み合わせてまずはテストします。
この段階でどこまでイラストを入れるか、凝るか、どの点に注意してテストキットを作るかなどは本当に人それぞれですが、私の場合はテストキットはかなり適当なもの。
これは「どうせテストでしか使わないから凝っていられない」という理由の他、単純に私が絵を書けないから。そしてなにより、「テストとしてはゲームシステムに集中したい」という点があります。
完成品では魅力を最大限に高める工夫として綺麗なイラストを使い、豪華な部品を使いたいところですが、そうした「加点」はゲームシステムそのものの評価時にはノイズになる、というのが私の意見です。もちろん販売時には見た目も最大限良くなるようにします。(ここは今回はタナゴさんにお願いした部分。すごく良い物になりました)
量産
完成品を量産する場合は、数量にもよりますが最近は印刷業者に頼む方がほとんどになっています。もちろん決まりはないので、少量であれば家で名刺カードに印刷してゲームを作っても問題ありませんし、包装はビニールのチャック袋でも大丈夫です。
逆に箱とカードの印刷、カードの丁合から梱包、最終のシュリンク包装まで全部やってもらえる印刷業者もありますので、そうやって手間を省くのも良いでしょう。ヘボコンをボードゲームにした「卓上ヘボコン 対戦キット」の場合は、いくつかの理由からその中間の方法で作っています。
一つ目は「コスト」。全部お願いすると当然コストがかかるので、自分でできることは自分でやってコストを下げています。個人制作ならではですね。もう一つは「コンポーネント(部品)」。このゲームでは金属のナットや3Dプリンタの駒、タイマーと色々な部品を使うため、印刷業者では手配できません。
このため、
- ボードや箱 : 印刷業者にて印刷
- ナットなど : 別途手配
- 駒 : 自作
とそれぞれ別に手配しました。
量産の工夫
「卓上ヘボコン 対戦キット」の駒は我が家で3Dプリンタで作っています。
量産性を高めるため、サポート材がなくても作れる形状でデザインするなどの工夫をしています。ナットは36個を同梱していますが、一つ一つをカウントすると手間なので、効率よくカウントするために「キッチンスケール」を使用しています。
この方法は便利に見えますが、カードや木製チップのように、軽い物や大きさのバラツキがある物では重さが安定せず使えません。この方法で検品する際は、自分のゲームで使用している部品・材料がその検品方法に向くかはあらかじめ確認しておいてください。
ルールブックは我が家で4つ折りしています(印刷所が対応していないため)。折りの時に便利なのはこうした簡単な治具。これも余った厚紙で自作し、場所を取らないよう、折りたためるようにしています。
できあがったゲームはシュリンク包装していますが、ここで役に立つのが「オーブントースター」。
シュリンク包装には家庭用ならドライヤー、専用機ならスポットヒーターの使用を推奨されることが多いのですが、業務用だとトンネル型のオーブンを使うこともあります。そこからヒントを得て実験したところ、最も効率よくシュリンク出来るのがオーブントースターでした。とはいえパンを焼くなどに使用する250℃程度では温度が高すぎるので、我が家では200℃弱に調整して使用しています。この辺は実際に使用される前に実験されることをお勧めします。
ボードゲーム制作経験者として役立つ事をお伝えできるとすれば、
— ペンとサイコロ (@pen_n_dice) August 12, 2018
「シュリンク包装の加熱にはオーブントースターが最適」ということでしょうか。
設定温度は我が家の場合200℃弱。
スポットヒーターより安くて安全、簡単。 pic.twitter.com/PQmRB6Jd3y
「卓上ヘボコン 対戦キット」販売中です
そんなこんなで発売中の「卓上ヘボコン 対戦キット」。ヨドバシカメラ様など家電量販店でも販売頂けるようになりましたが、制作は今でもこんな手作業で多くを行っています。
ヨドバシ.com - ペンとサイコロ 卓上ヘボコン 対戦キット [ボードゲーム] 通販
https://www.yodobashi.com/product/100000001003925274/
このゲームを始め「ペンとサイコロ」の各ゲームをよろしくお願いいたしますとともに、お店の端でゲームを見かけたら「こんな風にして作ってんのか・・・」とお手にでも取って頂けましたら幸いです。特にこのゲームに関してはナットを大量に使っている分、重さのインパクトは十分すぎるほど、ありますので。
より詳しいゲームの紹介・解説はこちらをご覧下さい。
また、私のゲームの通販サイトもあります。
<投稿者:ペンとサイコロ @pen_n_dice>