パイプなんて今ごろ使っている人が居るのか。いやいや居るところには居るのです。そして、パイプを作るという趣味も存在しているのです。木工手工芸品の自作例として、パイプ作りを一からざっくりと紹介する。
<投稿者:s.naito>
木工は独学。メーカー勤務の傍ら、日々試行錯誤を繰り返しながら、パイプを作る日々。メインはパイプだが、自分の趣味に関連するものは作ってみたくなる性分。
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なぜパイプ
パイプはタバコを吸う道具だが、楽しみ方はそれだけではない。外観を見て楽しみ、外形のエッジをなぞったりと表面の感触も楽しめる。もちろん喫煙具として使えば、香りと味を楽しめる。聴覚はわからないが少なくとも五感のうちの4つで楽しめ、奥が深い。特に味や香りは煙道径などのちょっとした作りで変わるところが面白い。
そんな「奥深さ」に、試行錯誤しながら挑むところにパイプ制作の魅力がある。あと、木の塊を削るのは単純に楽しい。
この記事を読まれる方は、基本的にパイプとは縁のない方だと想定している。なので、かなりざっくりとした作り方しか説明しない。しかし割愛した部分は、ほとんど完成度を上げるための作業なので、反響があれば別の機会に紹介する。
とても雑な構造説明
パイプはだいたい、タバコを詰める木でできた部分と吸口となるエボナイトなどの樹脂で作ったマウスピースからなる【図1】。とりあえず、タバコを詰める穴から、吸口の穴まで貫通していれば吸える(おいおい)。故に、作り方は1.穴をあける工程と2.外形の整形(表面加工含む)に分けられる。
ざっくりとした作り方
(1−1) 木に穴をあける
正確に穴を開けられるように、目印を書いておく。
穴(煙道&マウスピースと結合させるダボ穴)を開ける。
穴(チャンバー:タバコを詰める部分)を開ける。今回は、穴に対して正確に外形を出したかったので、同時に大雑把な形を削り出している。
(1−2) マウスピース(エボナイト+POM)に穴をあける。
今回はマウスピースと木の部分とを繋ぐダボにPOM(ポリアセタール樹脂)を使用【図5】。この2つを接着剤で結合して穴を開ける【図6】。エボナイト、POM共に難接着性の素材なので、POMの方を少し大きめに作り、エボナイトに差し込んだとき圧力がかかりで固定できるようにしている。
(2−1)外形整形
リューターや金属やすり、紙やすりなどをつかって整形。
マウスピースも同様にリューター、金属ヤスリ、紙やすりなどで成形。ダボ近くの尖った部分は旋盤を使用。
吸口部分のスリットは、ドリルと精密ヤスリ、紙やすりで、開けておいた円形の穴を広げて整形。
(3)表面処理
今回は、釘などを使って凹凸をつけてから染色。染色に使う塗料はレザー用染料を使用。今回は最初に茶系で染色したあと、黒で染色した【図11】。このあと、バフがけすると、凹凸の少ない部分は黒の塗料が剥げて、茶色の部分が出てくる。
その他の表面処理としては、木目出しをして光沢が出るまで磨いたり(バフがけ含む)、サンドブラストを使って独特の凹凸をつけたりする選択肢がある。
マウスピースはとにかく磨いて表面を整える。注意しなければエッジを丸めてしまうので、慎重に行わなければならない。
赤棒、白棒、カルナバワックスでバフがけするとこんな感じになる【図13,14】。マウスピースはプラチナ用の研磨剤でも磨いている。
終わりに
本稿では、とてもざっくりとしたパイプの作り方を紹介した。「単に使える」という観点では、穴あけと必要最低限の外形の整形ができれば良い。さらに、美しさやタバコの味を高めるには穴の設計や外形整形を突き詰めていくことになる。この工程は、筆者も日々試行錯誤で終わりはない。表面の磨きや木目出しなどは、ニーズがあれば別の機会に紹介する。
パイプ作りを気軽に体験したければ、予め穴の空いた木にマウスピースが刺さった状態のものが販売されている。これを購入すれば本稿の穴あけの工程とマウスピースの整形をスキップすることができる。
パイプ作りはマイナーなジャンルだと思うが、本稿で少しでも興味を持って頂ければと思う。
(Appendix1)あると便利な道具
穴あけに使えるし、手作業では精度を出しにくい回転体の整形や、回転軸に対する垂直面の整形が精度良く行える。
自由度の高い切削をスピーディに行える(逆に精度は出しにくいが)。
(Appendix2)参考になるかもしれないサイト
http://kyamadapipes.tumblr.com
K.YAMADAさんのサイト。"Pipe Making Information"にパイプ製作で使用するツールの紹介などをされています。最近はゲームにはまっていてあまり作られていませんが、素晴らしいクラシックシェイプのパイプを作られます。
<投稿者:s.naito>