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導電性フィラメントで静電容量式タッチセンサを作ってみた


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導電性フィラメントで静電容量式のタッチセンサを3Dプリントし、Arduinoを使って動かしてみました。

 

<投稿者:Nature3D @nature3d_>

フィラメント押出職人。卓上押出機で3Dプリンターのオリジナルフィラメント開発、製造、評価、用途展開などやっています。

twitter.com

 

3Dプリンタでタッチセンサーを作る!

フィラメントの新作ができました!導電性フィラメントです。テストしていくとフィラメントは安定して作ることができ、3Dプリントもできることがわかりました。

 

じゃあこれが実際何に使えるの?ということでいろいろ調べていたところ、いくつか例があったのですが、その中に静電容量式タッチセンサというのがありました。人が指でさわると感知するやつです。これはいけるんじゃないの?ということで実際にセンサを作って動かしてみました。3Dプリンタの造形品がタッチセンサーになるのでおもしろい使い方ができそうです。わりと簡単にできますので興味があれば読んでみてください。

 

準備したもの

導電性フィラメント

今回はEV30Sというフィラメントを使いました。

nature3d.net

Arduino UNO

タッチセンサの制御用です。

Arduino Uno Rev3 ATmega328 マイコンボード A000066
 

厚紙

使ったのは下記です。厚み約0.7mm。コシがあれば何でもいいと思います。造形品だけでセンサを作る場合は不要。

 

静電容量式のタッチセンサってどんなもの?

正直なところ電気電子はあまり詳しくないので、実は原理的なところはよく知りません。。。こちらのサイトを参考にさせていただきました。プログラムはまるまる同じものを使わせていただいています。

nn-hokuson.hatenablog.com

わかる! 電子工作の基本 100

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  • 作者:遠藤敏夫
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人体はある静電容量をもっており、人体自体がキャパシタとなるため、タッチすると抵抗とキャパシタでRC回路を作ることになる、というのが原理だそうです。よくわからないながらも、図を見ると仕組みは簡単です。1MΩの抵抗に枝が出ているだけの構造。これならできそうな気がする。最初は全部一体で作ろうかと思ったのですが、形状に制約が出てくるので抵抗の部分とタッチする部分に分けて作ることにしました。

 

実際に作ってみる

まず1MΩの抵抗を作りました。今回は検証のために抵抗の部分も作りましたが、わざわざ作らなくても電子工作で使う抵抗があればこちらの方が楽かも。どんな形状にするか考えたのですが、今回はとりあえずこんな感じにしました。データはこちら。

cults3d.com

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電熱線みたいな形状です。1MΩという高抵抗かつある程度大きめサイズということで、今回はこんな形にしました。四角い部分がリード線をつなぐところです。ジャスト1MΩにはなりませんでした。今回は1.2MΩ。スライサーの積層ピッチなんかでも抵抗値は変わってきます。抵抗値はだいたいでいいようです。バッチリ合っていなくてもセンサーとしてはそこそこ反応してくれます。

この抵抗にArduinoの9番と8番を接続します。センサに接続する側を9番につなぎます。プログラムを転送して、抵抗から枝を出したリード線に触れるとLEDが光ります。

 

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あとはこのリード線の先端にセンサーにする造形品をつなぐだけ。造形品をタッチするとLEDが光ります。いろんなものを3Dプリントしてタッチセンサーにできます。電気部品としてのスイッチでなく、触れるだけで操作できるというのはやっぱり楽しさがあります。置物とかおもしろい形状を造形してセンサーにしたりとアイデア次第で意外感や楽しさを演出することもできそうです。

 

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意外に簡単にできてしまったので、もうひとひねりしたい。。。ふと厚紙にプリントすることを思いつきました。うまくいけば薄いので保管が簡単になる、曲げられる、貼りつけができるなど普通の造形品にはないメリットがありそうです。ベッドに厚紙をおいてテープで固定し、Z方向にオフセットさせて造形してみました。

 

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厚紙にムラやゆがみが出たりするのでなかなか難しいですが、なんとかうまくいきました。2層だけの造形です。1層目が0.1mm、2層目が0.15mm。いろんなアイコンをかいたり、模様を描いたりしてタッチセンサーにできます。線が細くなりすぎると抵抗が高くなりすぎて感度が悪くなってくるので工夫が要りますが、いろんな絵をセンサーにできそうです。

 

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リード線の接続はテープでもできますが、簡単にとれてしまいます。しっかり固定したいときは導電性フィラメントの造形失敗品などをアセトンで溶かしてパテにし、これを端子にくっつけるときっちり接合ができます。紙や造形品にハンダは使えませんが、EV30Sはポリスチレンを使っており簡単に導電性パテが作れるのでリード線をわりと楽につなぐことができます。柔らかい間は導電性がありませんが、溶剤が飛んで硬化すると導電性がでてきます。

 

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導電性フィラメントは他にも曲げセンサー、ひずみセンサー、スマホやタブレットのタッチペンなどいろんな用途が考えられます。電子部品を扱う際の静電気対策にも使えますのでもし興味があればお試しください。

 

導電性フィラメント EV30S

nature3d.net

<材料、電気特性>

材料:ポリスチレン、導電性カーボン(カーボンブラック)

体積固有抵抗:30Ω・cm表面抵抗:1E4Ω/□(10の4乗)


<推奨条件>

ホットエンド:230~250℃

ヒートベッド:80~100℃

冷却ファン:OFF

 

 

<投稿者:Nature3D @nature3d_>

フィラメント押出職人。卓上押出機で3Dプリンターのオリジナルフィラメント開発、製造、評価、用途展開などやっています。

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