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大鳴門橋の1/2000模型を作ってみた


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大鳴門橋は,兵庫県淡路島と徳島県鳴門市を結んでおり,渦潮で有名な鳴門海峡に架かる吊橋です.全長は1629m,塔と塔の間の距離は876mになります.本作はこの橋を縮尺1/2000で精密に再現しました.その特徴は,すべて市販材料から製作し,3Dプリンターなどの特殊機械は一切使用していない点にあります.

 

<投稿者:明石海峡 @akashi_kaikyo
筆者は大学院生として長大吊橋の強度に関する研究をしており,その傍ら油彩による風景画描写や,橋梁模型の製作をしています.

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www.pixiv.net

 

<模型> より詳しい製作記録

http://hobbycom.jp/my/1f49c68a83

 

製作動機

筆者は以前から吊橋に興味を持ち, 2004年から約6年の歳月をかけて明石海峡大橋1/1000模型を製作しました(図-1).しかし,当時の技量不足から幾つかの反省点が生じ,また完成から5年後の2015年,展示してあった母校にて解体されたことから,このたび新たに吊橋の模型を製作することにしました.そこで,以前より交流のあった方が建設に携わっており,また明石海峡大橋と同路線に位置している大鳴門橋を選定しました.

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図‐1 明石海峡大橋1/1000模型

 

[新版]明石海峡大橋

[新版]明石海峡大橋

 

 

設計

まず,製作にあたって工事誌や工事写真集などの公式資料から模型用の図面を立ち上げます.資料から分からない部分については現地調査を行います.製図にはJW-CADを用いており,図-2に示した一般図以外にも部品の詳細など合わせて10枚ほどの図面を作っています.

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図‐2 CADで描写した図面

 

四国と本州をつないだ“夢の架け橋

四国と本州をつないだ“夢の架け橋" 大鳴門橋、明石海峡大橋完成までの追憶

 

 

主要部品の製作

製作した図面を,家庭用のプリンターで正確な寸法になるよう印刷して,部品を組み立てるための台紙とします.次に,市販のプラ棒をカッターで所定の長さに切り分け,台紙の図線上にピンセットで正確に置きながら接着していきます.このとき歪みが出ないよう,定規を当てながら作業を進めます.図-3は補剛トラスの製作作業の様子ですが,トラスの主部材だけで1478点,付属物は約200点あります.

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図‐3 補剛トラス製作の様子

約4か月かけて完成したトラスが図-4になります.写真では桁の裏面を撮っていますが,内部に管理通路を備え,表面には道路ができています.断面の高さは6mm,幅は17mmです.

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図‐4 補剛トラス完成

同様に,主塔(図-5)とアンカレイジ(図-6)を製作します.こちらは主に板材から製作しています.主塔の実際の高さは海面から144mなので,模型では72mmとなります.さらに海面下の多柱式基礎まで再現しています.

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図‐5 主塔

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図‐6 アンカレイジ

 

ジオラマの製作

以上のように製作した部品は,長さ95cm幅20cmの土台(ヒノキ集成材)の上に正確に配置します.次に,スチレン板を重ねて作った等高線の基礎を設置し,その上から石塑粘土を被せて地形を作り上げます(図-7).粘土層の厚さは等高線から2.5mmを確保し,標高の高いところから深い海底に向かって敷設していきます.

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図-7 ジオラマ製作

地形が完成したら,表面を彩色します(図-8).海底部はグラデーションが綺麗に出しやすいよう,油絵具で着色し,深さによって色を変えます.陸上部は基本的に草色に塗っています.最後に,海面を表すPET板を載せ,植栽や海岸の砂や石を再現します.

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図-8 ジオラマ製作

 

ケーブル系の架設

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図-9 主ケーブル架設

ジオラマが完成すると,いよいよ上部工の架設に入ります(図-9).まず,主ケーブルはφ0.4mm ステンレスメッシュワイヤーを用い,予めアクリル系塗料で白色に染めます.ワイヤーは癖が少ないため,ケーブル材料に適しているのです.次に,塗装した主ケーブルを塔頂部の溝に嵌め込み,両端のアンカレイジにしっかり固定します(図-10).この作業は,実際の建設と同様,全体形状に及ぼす影響が非常に大きいので,ケーブルの張り具合を慎重に調整しながら固定します.

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図-10 アンカレイジ内部

主ケーブルの架設が終わるとハンガーロープ(以下,ハンガー)の製作に入ります.ハンガーに用いる材料はφ0.1mmの銀メッキ銅線で,これは髪の毛と同じ太さです.製作方法は,まず短冊状に巻いてある銅線を引き延ばして癖を取り,台紙に当てながらカッターで所定の長さに切り分けます.そして,シャープペンシルの先を当てながらピンセットで挟み込んで,180度折り曲げます(図-11).このとき,シャープペンシルの芯がφ0.5mm,主ケーブルがφ0.4mmなので,ハンガーは主ケーブル上にぴったり嵌ります.

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図-11 ハンガー製作の様子

こうして出来たハンガーを主ケーブル上に引っ掛けて,上下端を瞬間接着剤で固定します(図-12).ハンガーは場所によって長さが異なり,短いものは1.7mmで,くしゃみで吹き飛んで行方不明になったり,逆に長いものは40mmになり,僅かな衝撃で曲がったりしますので,慎重に作業を進めます.以上のような作業を約4か月かけて,計596本繰り返します.ここまで本数が多くなったのは,実橋と同様に全ての定着点でハンガーを2重に設置したためです.

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図-12 ハンガー架設作業

 

最新版 ラクラク建築模型マニュアル (建築設計シリーズ8)

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完成

全てのハンガーを取り付けたのち,ハンガーの接着点が目立たないよう再塗装します.最後に,補剛桁外面の移動式検査車のレール(0.3mm角材)を取り付けて,完成です.(図-13)写真は淡路島側の塔付近を撮ったものです.(その他のアングルを見たい方はページ上部のリンク参照)製作に要した期間は途中の休工期を除いて約12か月,延べ1000時間超でした.

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図-13 完成

 

 

<投稿者:明石海峡 @akashi_kaikyo

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